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日々雑感 サプライチェーン四方山話

サプライチェーンは意外と身近なものです




2024年04月25日
<ライドシェアを田舎で成立させるために>
まずは車両価格と燃料消費を抑えること。客人数が一人が前提であれば小型自動二輪に屋根をつければよい。普通自動車を使っている限り利益は出ません。危険だというなら倒れない3輪車という手もあります。
次に人件費。これで生計を立てるのは所詮無理だから、市が年金生活の高齢者を中心に人間をプールして需要と供給の橋渡しを行うというのはどうでしょうか?
雇用機会の少ない田舎で年金では生活が今一つ苦しい高齢者の雇用機会にもなります。市は人材登録と引き換えに自動二輪免許取得を支援するというのもあってもいい。1か月2回以上、5年120回を条件に免許取得費用免除などの特典を与えればいい。
) 今の政府ではここまで思い切った話は出来ないとは思いますが。


2024年04月25日
<運転手問題>
物流とは直接関係ないですが、運転手が足らないのはバスも同じです。京成ではシニアと女性をターゲットに募集をかけていますが、それでも不足気味。逆にタクシーは駅によっては過剰気味のところもあり、運転手同士の縄張り争いから暴力沙汰になったこともあります。
稼げるところにタクシーは集まる、というのはタクシーが営利企業である限り当然の権利です。これはライドシェアでも同じ。稼げないところには行かない。だからマンハッタンは一時ライドシェアの車で大渋滞でした。ライドシェアを主張されている方々は、この当たり前の話をわかっていない。過疎地で商売が成立するわけありません。
専業でやるなら営業キロで日に100-200q程度は走らないと商売は成り立たない。お小遣い稼ぎにしても近距離で1回2q弱だとしたら、せいぜい客単価は700円、お迎え料金をとっても平均1000円。ハイブリッド車を使えばガソリンはかなり浮くけどその分減価償却が大きい。400万円を10万kmで割ると1qあたり40円。お迎え平均4qとして1回の走行距離は10qくらい。ガソリン代を180円としたら全体ではガソリン代、償却を考えると1回で500円は余裕でかかる。限界利益は500円しかない。
さらに人件費は最低賃金を1000円としても6時間で6000円。間接費経費は常識的にその半分くらいはかかるので人件費だけで10000円は見込む必要がある。時間あたり2件が6時間ずっとお客様つくと考えても直接労務費分にしかならない。稼働率はせいぜい6割程度と考えるとビジネスとしは成立しようがない。
単純に考えてライドシェアは過疎の足にはならないということです。そもそも、タクシーが来てくれないのは利益が出ないから。さらに効率の悪い個人のライドシェアで利益が出るわけがない。補助を出せばいいという人もいますが、ならタクシー会社やバス会社に補助を出せば済む話。政治家の方々はライドシェアをボランティアか何かと勘違いしてませんか?


2024年04月25日
<2024年問題>
物流業界は高齢化がかなり進んでいていて、若手がなかなか参入しないのが問題になっています。業界自体がブラックというイメージが強く、その意味ではこの残業規制は悪い話ではありません。ただ代替手段は準備しているのか、となると話は別です。
一番物量の多い東海道山陽道についてやっとトラック無人化専用レーンの計画が出始めるというていたらく。いつになるのかというところです。こんな話数年前からわかってますが、今まで何もせず、規制が実施されてから、「あーなんか対策だしておかないとなあ」等という乗りでこんな話が出てきました。日本、大丈夫か?と正直思います。
以前も書きましたがなぜ道路にこだわるのか。コンテナ積み下ろしのスループットを上げて長距離を鉄道化するのが一番近道だと思います。集荷後、行先で仕分けることはすでにやっていますから、その仕分けごとにトラックを走らせるのではなく、最寄りのコンテナターミナルに持ち込み、定期便に乗せればいい。
東海山陽の長距離トラックを半減させることができれば、CO2は減るし、道路も痛まないし、渋滞がなくなれば自動車販売にも良い影響があります。投資はどこがやるのか、ということに関しては環境も道路整備予算もからむのだから当然政府が予算を組んでやるべきだと私は思います。今更道路を作ろうなどと言ってるようでは遠い夢ではありますが。


2023年06月04日
<計画の前にやるべきこと>(没原稿の復活)
<国内物流は計画しやすい?>
日本はカリフォルニア州の半分の面積、しかも大半が山で、平野部の人口密度が結構大きく、物流に関してはかなり効率的です。隣の家までは近ければ、集配にかかる時間、コストは減ります。ネット通販が離島を除き翌日配送が簡単に出来るのは国土が狭いこと、道路網が整備されていることが大きいでしょう。しかし往々にして、国内のサプライチェーン計画が思い通りに行かないケースがあります。
<倉庫に何をやらせるか?>
かつては物流倉庫というとあまり受けの良い仕事ではありませんでしたが、近頃はロジスティクスの重要性がクローズアップされ、サプライチェーンという格好いい名前まで与えられて、結構花形に近い領域になっています。ロジスティクスを物流としてしまうと落とし穴にはまるケースも散見されます。モノの仕分けと物流だけならいいのですが、作業が中に入ると効率が悪くなるケースがあります。たとえば、パレット上の荷物を一度ばらしてまたパレットに積みなおす等の作業が発生するととたんにリードタイムが不安定になります。
<どの単位で運ぶか?>
これは荷を出してから最終的な配送に至るまでのシナリオを組めていないことが理由になるケースが多いと感じています。どこで何の作業をさせるかというのを安易に考えると工数が避けない倉庫での作業のために中間で荷が滞留するなどのトラブルが起きます。 よく発生するのが、工場への部品供給で、小分けにする手間をかけているケースです。海外から輸入する部品は通い箱で輸入は出来ないのでどこかで荷ほどき、詰め替えは必須となります。しかし国内は通い箱での輸送を行うことでラインに直結できることが多い。
<理想は理想>
しかし、ラインでの自動化を追求するあまり、自動化に合わせて部品の箱を入れ替えたりすると自動化する前よりも手間がかかってしまうということが起きます。これは少量多品種生産をロボット化しようとして、かえって手間がかかってしまうという話に似ています。製造も輸送も最後は人間がどうするか、ということを中心に発想しないといけません。
<手作業=悪ではない>
これはサプライチェーン管理に限らないのですが、よく、コンサルタントの方が出すレポートで「手作業で工数がかかっている」という「課題」を書かれている方が結構おられます。「手作業で工数がかかる」のは「現象」でしかなく、「課題」ではないケースが大半です。なぜそれが手作業なのか?ということを考えないと、対策がおかしなことになります。前に紹介した手作業で荷物の積み替えをやっているから、自動化すべきだからロボットを導入するというような対策は効果がありません。というか恐ろしく高価になります。なぜ手作業が発生するか、元の原因を見極めて対策を打つことが重要です。
<原単位にも注意>
あと手作業でないと出来ないケースもあります。例えば鉄材のスタンピングプレスはロール材を使うケースが多く、これは重量で購入します。しかし、使う時は長さで原単位を管理します。厚みにばらつきが全くなければいいのですが、どうしても仕様上誤差があります。これは長さに誤差があり、50mのロール材を買ったつもりが実は49,5mしかないというようなことも起こりうるわけです。1個に1m使うとしたら、単純計算で1個足らなくなるわけです。(こんな単純ではありませんが) 直納品の場合には実績と棚卸から担当者が発注を調整することになりますが、これが輸入品になるとどこかで安全在庫を設定しておく必要があります。これは自動化するよりも人間が判断したほうが早いでしょう。
<計画は計画>
計画立案の時にはリードタイムの不安定性、原単位のずれなどの調整をどうするかを方針を決めて置く必要があります。物流も毎日「事件」が起きます。計画ツールをうまく運用するためには人間とシステムの役割分担を決めておくことが重要ということです。


2023年06月04日(没原稿の復活)
<サプライチェーンとは何か?>
先日、とあるコンサルファームの若手と話をしていた時のこと、彼が作った資料に「デジタル化」という言葉があったので、「デジタル化って何だと思う?」ということを聞いてみました。聞かれてすぐに答えられない言葉をプレゼン資料に使うのはNGです。それなりの答えをひねり出していましたが、やはり即答できない。 SCMもそんなバズワードの一つです。SCMって何?と聞かれて、サプライチェーンマネジメントと答えたら帰っていいよと当然いわれますが、これもちゃんとした答えを準備しておく必要があります。それは「デジタル化」と同様で、人によってサプライチェーンの範囲が異なるからです。
私はデジタル化というのはプロセス上の判断の明示化だと思っています。YESかNOかなんて歌が昔ありましたが、暗黙に判断していることを明示的に示すことで、人間判断範囲を限定、出来る限り判断すべきところに注力できるようにすることと考えます。同様に私がサプライチェーンを定義するなら、販売(製造)に必要な商品(資材)を必要な時に必要な場所に必要な量を輸送できるようにすること、というところでしょうか? これも実はあいまいで、どのレベルの話をしているかを明確にしなくてはなりません。 とある書籍がサプライチェーンリスクについて出ていましたが、在庫欠品とかではなく、歴史の話から始まってどちらかというと地政学に近いような内容でした。これを来月のサプライチェーン計画に活用できるかというとそれは無理でしょう。
<辞書は大切>
我々が、お客様と話をする時、最も気を遣うのは言葉の意味です。サプライチェーン管理という言葉は二重の意味で怖いのは、まず前述の通り、サプライチェーンという言葉そのものが持つ意味の幅です。それが経営計画のレベルなのか週次計画のレベルなのか、という話を常に明確化するため、特に初めてお話しさせていただくお客様には年次計画レベルのサプライチェーンとか週次のサプライチェーンとか修飾語をつけるようにしています。それでもっと厄介な言葉が「管理」です。私もよくやってしまうのですが、若手のコンサルタントと仕事をするときにNGワードに指定するのがこの「管理」です。
<管理とは?>
業務フロー図を書く時にプロセスとして「計画を管理する」と書いてしまうコンサルタントがたまに(結構)います。これは計画を決定しているのか、誰かが作った計画をレビューしているのか?と聞くと「うー−ん」となってしまうケースが多いのです。前者であればレビューが誰かを明確にしなくてはならないし、後者であればそもそも誰が作ったか記述されていない。計画は地中から湧いて出てくる温泉みたいなものではなく、誰かが何かの意図をもって作るものです。ではそれは何をもとにしてどうやって作るか?ということも重要ですが、それを見て何を判断するか?という話も必要。後者をよく「管理」と表現してしまうのですが、何を基準にして、どんな判断を下し、どんな行動をそれに従って起こすのか、まで書かないと意味のある記述にはなりません。
<あいまいさは世界共通>
「だから日本人はダメなんだ、海外では。。。」とおっしゃる、いわゆる出羽守という方もおられますが、それは間違っています。少し縁あって外資系の会社と仕事をしたことがありますが、誰が決める責任を持っているのか?と聞いたら「ミーティングをやってみんなで決める(インド人)」、じゃあアイデアあるのか?と聞いたら「そんな聞き方をしたらカドが立つからもう少し柔らかい(あいまいな)表現にしろ(アメリカ人)」、「決まっていないがそれは今無理して決めなくてもいいじゃないか(中国人)」と何度ミーティングやっても要件が決まらないということがありました。こういう人たちに要件定義をすると「管理」とか「協議」という言葉がよく返ってきます。それを突き詰めることを忖度して止めたリーダ本人がプロジェクト途中で破綻しかけると、よくこんなことを言い出します。 「誰が悪いということよりもみんなで力を合わせることが大事だ」 これを世間で「おまゆう」と言います。


2023年06月04日
<サプライチェーンの失敗>(没原稿の復活)
2011年3月11日東北から広範囲にわたり大地震に見舞われました。私はたまたま前日に1日早く海外出張から帰国して、金曜日だったこともあり、休暇を取って自宅にいました。午後15時45分ごろ大きな揺れとともに液状化で周りは泥が噴出して目の前の道路が割れました。この時たまたま、車の燃料はほぼゼロ。ガソリンいれなくては、と思っていた矢先にガソリンが来なくなりました。製油所はほどなく動き始めたので、ガソリンそのものが足らなくなったわけではなく、輸送が途絶えたわけです。
<なぜか回復しないサプライチェーン>
淡路島の地震の時は高速道路が倒壊するとかありえないことが起きましたが(倒壊した所だけ震度7だったそうです)、幸いにも今回は起きなかったので、陸上輸送は回復にそこまで時間がかからないはずでした。ドイツ気象庁がシミュレーションしてくれた放射性物質の広がりをチェックしていたのですが(当時の政府は全く情報を公開してくれなかったので)放射性物質が迫る中、家族を非難させようにもガソリンが無い。電話をあちこちかけまくって4日目あたり、やっと一軒、入荷したことを教えてくれました。そこまで行ったら長蛇の列。聞いた話では地震直後にポリタンクを持ってガソリンを何十リットルも買っていく人が多く、在庫があっというまに無くなったのだそうです。在庫がなくなったことで余計に確保に走る人が増え、入荷しても在庫がすぐになくなる、という現象が起きました。確保に走った人が一段落して需要が正常化してやっと流通が始まったとのこと。
<歴史は繰り返す>
同じことが起きたのが2020年のコロナ騒ぎです。マスクを買い占めて高値で売りつける不貞の輩が横行しました。再利用可能なマスクを配ることで不安を解消し、政府はこの騒ぎを収めました。しかしその横で、全く関係ないトイレットペーパーの在庫がなくなりました。これはかさばるので、買い占めて高値でうりつけるのは難しい。それでも12ロール通常400円のトイレットペーパーを7980円でネット出品していたツワモノもいましたが。 無くなった理由はガソリンと同じです。店舗在庫など1−2日分しかないので、全員が倍ずつ買ってしまうとその時点で在庫は切れます。在庫が切れたことにパニックになってさらに事態を悪化させる。
<心理は機械にはわからない>
人間の心理はコントロールできないので、パニックを収めるには販売規制と出荷増しかありません。これはメーカにとっても迷惑な話です。需要だけを見ていると対策を間違えてしまいます。これは需要が増えるわけではなく、単に前倒しになるだけです。だから在庫再配置と横持ちを流すことで出荷増対応し、流通側に販売規制をお願いするしかない。 経済学では需要供給で価格が決まると教えられますし、自動調整装置が働く商品は多い。しかし、一般消費者の必需品は「不安定な平衡状態」にあり、この安定曲線が「安心感」みたいなパラメータで変化するのでしょう。このあたりの理由付けは経済の専門家にまかせるとしてサプライチェーンでこれをどうやって制御するのか、が問題になります。 需要動向から「機械学習」で判定する?いやいやサンプル数が全く足りない。ではDXで自動化? こういう時は人間の出番です。機械に頼りすぎるのはよくありません。自動操縦に慣れすぎてマニュアルに切り替わった瞬間に新米パイロットがパニックになって旅客機が大西洋に落ちた事故が数年前にありましたが、そこまで深刻でなくとも非常時の訓練はシステムでも欠かせません。非常時の判断は「非常」であるがゆえ訓練が必要ないわゆる機械学習できないのです。
<映画は映画>
映画では状況を総合的に判断して各々の対策の利得を計算し、対策推奨してくる、みたいな賢い機械が出てきますが、かなり遠い未来の話でしょう。余談ですが、映画に出てくるコンピュータの不思議、というのがあって、一つはいまだにオープンリールが出てくること、なぜか触ったことがないシステムのターミナル画面(CLI)に登場人物が直接入力していること、もう一つはなぜかコンピュータが火を噴いて爆発するシーンがあること、が代表的なものだそうです。まあ万能AIが出てきても違和感ないのでしょう。


2023年01月31日
<コード統一は可能か?>
コード統一は目的ではなく手段です。ここを間違えると無駄な労力をかけることになります。何がしたいのか?が重要です。サプライヤコードなどサプライヤとは何か、で内部でもめることもよくあります。日本は「商社」が商流に入っているケースがあり、商社に発注をし、商社から納品書を受け取ります。私が野洲にいたときには榊電業さんという商社からありと生産材を含めていろいろなものを購入していました。では榊電業さんは「サプライヤ」か?というとそれは違います。でもERPのマスタ上のサプライヤは榊電業さんなわけです。
コード統一はグローバルにまとめて購入すれば「BuyingPower」につながるという考えて行うケースがありますが、これは商社でまとめるのか、というと違います。よく商社不要論を言うコンサルもいますが、一度直取引でやってみたらいいと思います。商社の能力がなくて直取引に切り替えたことは2度ほどありますが、前出の榊電業さんみたいな優秀な商社にはどっぷり頼らせていただきました。モノの調達は人のコネクションがモノを言うことが結構あるのです。
集中購買は時としてトラブルを引き起こします。鋼材などは言うに及ばず、コピー用紙とかでもそれは発生します。紙質がUSと日本では異なることはご存知の方も多いと思います。欧州で暮らしたことがないので欧州の紙質はわかりませんが、欧州製の万年筆が日本の紙では全く役に立たないということもありました。問題は万年筆よりはコピー機です。最悪故障するのですが、その復旧費用は集中購買にした効果の数年分を吹っ飛ばしてなおおつりがきます。


2022年11月28日
<空中配送>
USの某通販会社がUS国内でドローン配送の実験をやっていますが、特に日本ではこれは自動運転と同じ問題を抱えています。事故が起きたら誰の責任になるか、ということです。自動運転で事故が起きるとそれは運転者の責任ではありえないのですが、保険をかけているのは運転者または所有者です。ドローンも同じで例えば墜落して人的被害、もしくは物損が発生した場合、また荷物に損傷があった場合、これは誰も責任になるのか?
ドローンの故障、ドローンの積載装置の故障、不適切な積載、ドローンコントロールプログラムのバグ、操縦AIのバグ、操縦者のミス、第三者からのハッキング、いろいろな原因が複合的に発生します。例えば積載装置の故障が起きた場合にAIの安全装置の範囲を超えてしまって墜落して人に当たり、ケガをした場合、誰が責任を取るのでしょうか?
また他の問題もあります。他の技術訴訟同様、法律を作成する側が技術を理解しているか疑問です。技術訴訟、特許訴訟では首をひねるような判決がよく出ます。
ドローンは安全性が保証されたものではありませんし、密集している場所で事故が起きると大惨事になる可能性もあります。航続距離があれば、離島への配送には使えそうですが、航続距離の長い高級ドローンは高価で、投資対効果に疑問が出ます。
やはり、ドローン配送は事故の起きにくいところでテストを十分にし、法律をきちんと整備してから行うべきでしょう。


2022年10月20日
<デカップリング>
某N新聞がここのところ、サプライチェーン再構築における脱中国で何兆円の経済が「消える」というような記事をだしていますが、大丈夫か?と正直思います。
数十兆円の市場が消えるわけがありません。なぜなら特に生活必需品は必需品なので、中国から買えなかったら、自分で作るか他国で作って輸入するしかないし、特に食料関係は代替品が必要になります。必要カロリーが脱中国で減るわけではないので、経済が単純に縮小するわけではありません。
代替するためにはどれほど大変かを数値的に分析する話を記事にするならともかくも、これから大変だ、と騒ぐだけではただの煽り記事と言われても仕方ないでしょう。
冷静に考えて、これだけ複雑にからみあったサプライチェーンを完全に分断するのは世界全体の経済にとって良いわけはなく、当事者も出来ると思っている人は西側、中国側両方とも少ないと思います。技術の流出とかが問題であれば、それを防止するのが対策というもので、サプライチェーンを分断することでそれが達成できるのか私は疑問です。問題は技術の流出、特許違反など知的資産をいかに守るかであり、守らない企業をいかにつぶすかではないはず。
日本企業や公共機関は技術保護についてはかなり甘く(USの企業も結構ザルですが)、流出を手助けする政治家(もちろん日本の)もおられて対策を早急にとる必要があります。最低限特許は押さえ、技術部門、工場などのセキュリティの強化も合わせて必要です。昨今、コストが安いからと、海外開発を進める企業も多いですが、リスクに関しては結構無頓着な企業が多いのが実情。
とはいえ、国策として進める以上、対策は取らなくてはなりません。幸いなことに代替となる工場候補は日本にあるケースがほとんどです。今は円安。これは製造拠点の国内回帰の良いチャンスでもあるのです。他国が金利を上げているから日本も上げないといけないとか言う方もおられますが、金利だけででレートは決まりませんし、経済学を少しでもかじっていれば、そういう短絡的発想にはなりません。また円安にはメリットもあります。というかメリットのほうが大きい。日本はすでに加工貿易比率が3割以下なので製造業に与える影響は少ない。その上、燃料の確保は少々割高でも安定したエネルギーが保証されます。
この際、国内回帰をめざしてはどうかと私は思います。


2022年06月11日
<モーダルシフト
現在の国内物流の主流はトラックです。鉄のホットコイルみたいなものは船で運ぶことがありますが、これは行き先が海外沿いにあるからできる話。私はかねてから、鉄道の活用をあちこちで主張してきたのですが、これもなかなか進みません。
鉄道の利点は圧倒的な輸送力です。トラック数十台分を1編成で運んでしまいます。ではなぜ使われないか? 理由は明快で柔軟性とボトルネックの存在です。貨物列車は旅客ダイヤの間を縫って走ることも多く、また夜間は保線作業があるので自由に走れるわけではありません。もっと深刻な問題は積み替えターミナルの効率性です。よくトラックだとラストワンマイルという言い方をしますが、これは中距離までは中型もしくは大型トラックで運べるけど、最後の1マイル(1.6q)は個別配送となるという話です。ネットワークでもよく言われます。しかし、鉄道ターミナルはすべての駅にあるわけではなく、あくまでも長距離輸送の代替手段です。中距離は積み替えになりますが、コンテナ車からの積み替えになるので最低でも10ftコンテナを運べるトラックが必要になります。工場への部品供給でも物量があればこれでも大丈夫でしょうけど、混載コンテナでは個別配送は無理、ということはもう一回積み替えが必要になります。
千葉に住んでいるとアマゾンの倉庫が近いので朝依頼したものが当日に届くこともあります。九州の会社からくる場合でも翌々日には届きます。つまりは鉄道は個人向けの輸送には向かないということです。法人向けの輸送はどうか?というとここで問題になるのがサプライチェーン計画の精度とリスク管理。JRFには効率アップを期待したいところですが、それでもトラック輸送に比較すると1−2日の差はでます。これが計画管理で吸収できるようになれば、輸送は大幅に効率化しますし、一般道路の渋滞もかなり緩和するでしょう。実際某自動車メーカなどでは東北地区向けの部品で一部実行しています。
さらに言えば、コンテナを一つの「パイプ」として全体のサプライチェーンを設計するようなアプローチがあってもよいと思います。つまりJRFそのものがキャリアではなくフォワーダとして機能するようにする、逆に言えば、荷物の受付から行き先物流拠点まで運ぶというビジネスにするほうが効率的だと思います。もっともそのためには変化する荷量をどう割り当てるかというシステム化が必須です。手作業ではこのパズルは解けないと思います。
トラック輸送から鉄道への切り替えはCO2排出量、道路整備費用など、かなりの効果が出るとは思います。トラックは重量があるため燃料を消費するだけではなく、道路の傷みの原因にもなります。受益者負担ということで、トラックの高速道路料金を車軸数で決めている国もあります。CO2排出量に関してはトラックを電動化すればいいという議論もありますが、航続距離が問題になりますし、恐ろしく高価で鈍重、しかも足の短いトラックになります。しかも昨今の電力不足を考えると電動化はあまり得策ではないでしょう。バスやトラックが全部夜間に充電始めたら現在の電力の余力からすると大規模停電を引き起こすかもしれません。 トラック運転手も高齢化し、不足し始めていることからも、全体最適の政策としてこういう話が出てきてもいいと思いますが、短期的にはトラック業界からは反発されるのでなかなか進めにくいとは思います。業界の失業問題も含め、ロングレンジで物を見てくれる政策担当者がいてほしいものです。


2022年04月18日
<サプライチェーンはコンサルもわかってないやつがいる>
かつて私の同僚のコンサルタントが「資材部門は伝票を切っているだけの部門だからアウトソースすべき」と、よりにもよって資材部の前でやらかして、暴動寸前になったことがあります。
私は即座に役員に電話し、許可を得て、この「コンサルタント」をプロジェクトから叩き出して事なきを得ました。資材部門は調達できない時にこそ活躍の場があるのですから「ふざけんじゃねえ、バカヤロー」と怒号渦巻いたのはある意味当然。
システムベンダーにも「このソフトが入ればサプライチェーンは自動化が進む」とか言う人もいます。
サプライチェーンは工場同様、毎日何かが起きます。梱包材が無い、通い箱が無い、トラックが来ない、間違って小さいトラックが来た、とかいう現場レベルから出荷したあとに出荷要求の訂正が来るとか、異品出荷に気が付く、港が止まった、地震で高速道路が落ちた、という話もあります。それに対応するのは人間でしかありません。高速道路でトラックが事故に巻き込まれた時に、代替品作ってもらう交渉を工場と電話でして、トラック手配して、出荷手配をかけ、お客様まで運んでくれる、などという話をそのシステムやってみてほしいものです。
それでもなお、めげないコンサルには「そのためのDXだ!」とか言う輩もいますが、頑張ってやってくださいとしか。。


2022年02月09日
<パッケージソフトの入れ方>
サプライチェーン管理はシステムを入れると改善する。なんて話はありません。
サプライチェーンのシミュレーションの前にリスク管理をどうするかが議論されていないケースが多くあります。サプライチェーンのコンサルタントはシステム化の前にやることが山ほどあるはずですが、システムのセールスマンになってしまっている人が散見されます。これはERPでも同様で、システムに合わせるとか言い放つ無責任なコンサルタントもいますが、何を合わせるのかが全く不明なまま進むと最後は破綻することになります。サプライチェーンは在庫がめちゃくちゃで結局使わなくなってもEXCELで代用するという手が残っていますが、ERPは決算が閉まらないというとんでもない状態がおきます。
ただそれを認識しているコンサルタントが減っているのも現状で、あるお客様で、データがそろっていないとか操作が複雑でわかりにくい、という課題と同列に「決算が閉まらない」と平気で書いている人がいました。ここまでひどいのはほんの一部ではありますが。
こういう事態を招かないようにするためには最初にシステムを使ってどんな効果を出したいか、何がしたいかを明確にすることが重要です。ここで効率化をめざす、とかペーパーレス化を促進する、とか成功したかどうかわからない目標を立てると間違いなく迷走することになります。


2021年10月10日
<在庫は悪?>
ある部品工場が火事になりました。その部品を使っていた某自動車メーカのラインは半日で止まりました。この自動車メーカは在庫は少ないほどいい、ということで減らす指導をしてきたのですが、結局ほとんど在庫を持たない操業をした結果、生産のストップと出荷のストップがほぼ同時でした。さすがにこの自動車メーカは苦情を言うことができなかったようです。これは工場が数十キロしか離れていなかったので、輸送リードタイムが短く、そう考えるのも仕方ないとは言えますが、海を越えるとなるとまた話が変わってきます。
最も近い、中国・アジア地区でも2週間ほどは見なくてはなりません。日本のメーカの生産は大変柔軟なところが多く、生産計画は販売動向で大きく変化します。2週間というのは情勢が変化するには十分な長さですし、もとより、火事などのリスクよりも港でのリードタイム変化のリスクのほうが格段の大きいというのが現実です。よく起きるのが港湾労働者のストで港の外に貨物船が何十隻もたまってしまいます。また積み替えた後の陸送のリードタイムも日本ほど安定していない上に時間がかかります。これらの変動要因を在庫という形でリスク回避することになりますが、在庫をどの程度積むべきかということは勘と経験だけではなかなかカバーできません。
そのためのシミュレーションソフトなのですが、リスク設定まではシステムは考えてくれません。何が変動要因になるか、市場動向はどう動くか、これはまだまだ人間系でカバーしなくてはならないところです。
あるソフトウエアメーカは「機械学習でこれらの予測ができる」と豪語しているようですが、我々の業界ではそれができると自称するシステムを“Crystal Ball System”と呼びます。その端末の左右には蝋燭がゆらめいていることでしょう。